ね》に違いありません。私は何もかも知っているのです。こやつを生かして置いては……」
川股と呼ぶ若者は真弓子の方にすりよって、なにものかを求めるようであった。真弓子は渡したものかどうか躊躇《ちゅうちょ》の色が流れている。
このとき二人が背にしていた入口の扉《ドア》が音もなく開いてピストルが顔を出した。
「二人とも手を上げろ、命がないぞ」
根賀地の声だった。川股と真弓子は観念して両手を高くさしあげた。見れば根賀地は真紅《まっか》な顔をしていた。彼の眼と唇とは私に読唇術で呼びかけていた。
それに答えると、根賀地の唇は無音ながら高速度に開いたり閉ったり左右へ動いた。
「ヤヤッ!」
私は根賀地の語るところの重大事件に、思わず驚きの声を発してしまった。
「お二人さん。お気の毒ながら、その室で少し休憩《きゅうけい》していて下さい。いずれのち程、お迎えに誰かを寄越《よこ》します。一秒を争うので、少し荒っぽい方法で失礼ですが……」
根賀地はすかさず、二人を川股の入っていた室に閉じこめた。
一大事! 私達二人は屋上に出て、格納庫《かくのうこ》の扉《ドア》をひらくと飛行機を引っぱり出した。われ
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