はドームへ入ったことのある者のみが、知り能《あた》うところの実感だ。そこには恐しく背の高い半球状の天井《てんじょう》がある。天井の壁も鼠色にぬりつぶされている。二百畳敷もあろうかと思われる円形の土間の中央には、奇怪なプリズム形をした大望遠鏡が斜に天の一角を睨《にら》んでいる。傍《かたわ》らのハンドルを廻すとカラカラと音がして、球形の天井が徐々に左右へ割れ、月光が魔法使いの眼光《がんこう》でもあるかのように鋭くさしこむ。今一つのハンドルを廻すと、囂々《ごうごう》たる音響と共に、この大きな半球型の天井が徐々にまわり始めるのだった。
「先生、あと五分しかありません」
襲撃事件でわれ等は貴重なる時間を空費《くうひ》し過ぎた。
「それでは。――相良さん。御依頼の件の御報告をいたします。口で申上げるよりも、根賀地研究員のおさしず通りにやって下さるのがいいと思います。じゃ根賀地君。順序通りにやって下さい」
先程から相良十吉はワナワナと慄《ふる》えているのだった。彼は冷静と放胆《ほうたん》とを呼びもどそうと、懸命に頭を打ちふり、頤《あご》をなでているのだった。
「相良さん、これから覗《のぞ》いて下
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