二時間はかかるのであった。
翌日は相良十吉に報告を約束した日だった。その朝も私は例のごとく十時に起きて、二三の訪客に接した。正午を過ぎると研究室に入って夕方まで机上執務《デスク・ワーク》を続けた。
そこへ中央天文台にやってある根賀地|囃《はやす》が一枚の天文写真を持って入って来た。その写真は私の気に入らなかった。今度は相良十吉を遠視電話でよび出すと、彼に六時頃新宿の十字路街で私の自動車を待っていて呉れるように伝えた。彼の顔色は前日に増して悪かった。そのくせ一層大きくなったように見える血走った両眼《りょうがん》を、クワッと見ひらいて私の方を凝視《ぎょうし》しているのだった。私の顔付から何事かを読みとろうというような風だった。
間もなく私と根賀地とは、目白の坂を下りて早稲田の方へ走る自動車の中に在った。山吹の里公園の小暗《こぐら》い繁みの中に入ったとき、思いがけなくドカンという銃声と共に、ウィンドー・グラスが粉微塵《こなみじん》にくだけちった。私はウムと左腕を抑《おさ》えた。咄嗟《とっさ》に自動車はヘッドライトと共に右へ急角度に曲った。ヘッドライトに浮び上った人影があった。逃げるかと
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