し、手榴弾《しゅりゅうだん》を投げつけた。小銃はとどいたが、手榴弾は、ずっと遠方で炸裂《さくれつ》した。
軍隊を狙撃《そげき》する軍隊なのである。そのような、不可解な軍隊を向うに廻して、東山少尉の部下は、敵慨心《てきがいしん》を起す前に、悒鬱《ゆううつ》にならないわけにゆかなかった。
向うの集団は、二手に別れた。一隊は、局舎の周囲を、グルグル廻っては、しきりに発砲していた。他の一隊は、地に匍《は》い局舎を掩護物《えんごぶつ》にして、ジリジリと、こっちを向いて進撃してきた。
少尉の部下は、イライラしてきたが、少尉は、まだ発砲の号令を出さなかった。
(たしかに、おかしい。あの兵士等の、鉄冑《てつかぶと》の被《かぶ》り様《よう》は怪《あやし》い。姿勢も、よろしくない。うン、これは、真正《ほんと》の軍隊ではない。それならば、よオしッ)
「撃《う》ち方《かた》用意!」東山少尉は、マスクを取ると、大声に叫んだのだった。「敵は陸軍々人の服装をしているが、不逞群衆《ふていぐんしゅう》の仮装《かそう》であると認める。十分に撃ちまくれ、判ったな。――左翼、中央の両隊の目標は、敵の散開線《さんかいせん
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