空襲葬送曲
海野十三

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)瓦斯《ガス》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)第一|狭《せも》うござんす

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#感嘆符疑問符、1−8−78]
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   父の誕生日に瓦斯《ガス》マスクの贈物


「やあ、くたびれた、くたびれた」家中《いえじゅう》に響《ひび》きわたるような大声をあげて、大旦那の長造《ちょうぞう》が帰って来た。
「おかえりなさいまし」お内儀《かみ》のお妻《つま》は、夫の手から、印鑑《いんかん》や書付《かきつけ》の入った小さい折鞄《おりかばん》をうけとると、仏壇《ぶつだん》の前へ載せ、それから着換《きが》えの羽織を衣桁《いこう》から取って、長造の背後からフワリと着せてやった。「すこし時間がおかかりなすったようね」
「ウン。――」長造は、言おうか言うまいかと、鳥渡《ちょっと》考えたのち「こう世間が不景気で萎《しな》びちゃっちゃあ、何もかもお終《しま》いだナ」
「ま
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