方で、銃声が響いた。
「パ、パ、パン!」
うむ、さては、怪しい者だ。
三発の短銃《ピストル》の音に、堤《つつみ》をきられたように、向うの方に、銃声が起った。バラバラと、弾丸が飛んでくる!
丁度《ちょうど》、そのとき、異様な響をたてて、一台の飛行機が、火焔に包まれ、錐揉《きりも》みになって、落下してきた。焼けのこった機翼の尖端《せんたん》に、チラリと、真赤な日の丸が見えた、と思った。次の瞬間には、囂然《ごうぜん》たる音響をあげて放送局裏の松林の真上に、機首をつっこんだ。パチパチと、物凄い音がして、松林が、ドッと燃えあがった。急に、あたりは、赤々と照し出された。そこは、吉奈軍曹が、突入したあたりだった。
見よ、局舎のまわりには、四五百名近い人間が集っていた。彼等の半分は、陸軍々人だった。のこりの半分は、背広だの、学生服だの、雑然たる服装をしていた。顔は、マスクで見えない。悉《ことごと》くの人間が、防毒マスクをしていた。軍隊と市民との混成隊とでも云いたいものであった。
(なぜだ。なぜだッ)
東山少尉は、不思議な軍隊を向うに廻して不審をうった。彼等は、こちらの陣地を認めて、小銃を乱射
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