》、右翼は横を見て前進、放送局の守備隊と連絡をとれイ。撃ち方、始めッ」
 猛烈な機関銃隊の射撃ぶりだった。
 敵は、最初のうちは、明かに、狼狽《ろうばい》の色を見せたが、暫くすると、勢《いきおい》を盛返《もりかえ》し、手榴弾を、ポンポンと擲《な》げつけては、機関銃を、一門又一門と、破壊していった。
 東山少尉は、振笛《しんてき》を吹いて、残りすくない部下を、非常召集した。だが、敵は多勢《たぜい》で、服装に似ず、戦闘力は強かった。局舎守備隊も苦戦と見えて、連絡は、どう頑張っても、とれなかった。最後の任務を果たすために、飯坂《いいさか》上等兵と姥子《うばこ》一等兵を選抜して、東京警備司令部へ、火急《かきゅう》の報告に出発させた。少尉が、腹部を射ちぬかれたのは、それから五分と経《た》たない後だった。愛宕山高射砲隊は、ここに一兵も余さず、全滅を遂げてしまった。
 放送局の守備隊も、それよりずっと前に、同じような悲惨な運命を辿《たど》っていた。局舎内には、警備司令部の塩原大尉を首脳として、司令部付の警報班員が数名いて、最後まで頑強《がんきょう》に抵抗したが、数十倍に達する暴徒を向うに廻しては、勝
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