」赤ン坊の珍らしい素六が、横から囃《はや》し立《た》てた。
今夜は、客間をつかって、大きなお膳を中央に並べ、お内儀《かみ》のお妻と姉娘のみどりが腕をふるった御馳走が、所も狭いほど並べられてあった。
長造が席につくと、神棚《かみだな》にパッと灯明《とうみょう》がついて、皆が「お芽出《めで》とうございます」「お父さん、お芽出とう」と、四方から声が懸った。
長造は、盃をあげながら、いい機嫌で一座をすっと見廻わした。
「全く一年毎に、お前たちは大きくなるね、孫も出来るし、これで清二が居て――あいつはまだ帰ってこないね」と、弦三の姿のないのに鳥渡《ちょっと》眉を顰《ひそ》めたが、直ぐ元のよい機嫌に直って、
「弦《げん》も並ぶとしたら、この卓子《テーブル》じゃもう狭いね、来年はミツ坊も坐って、おとと[#「おとと」に傍点]を喰るだろうし、なア坊や、こりゃ卓子《テーブル》のでかいのを誂《あつら》えなくちゃいけねえ」
「この室が、第一|狭《せも》うござんすねえ」お妻も夫の眼のあとについて、しげしげ一座を見廻わしながら云った。
「来年は、隣りの間も、ぶちぬいて使うんですね」黄一郎が相槌《あいづち》を
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