うった。
「それじゃ、宴会みたいになるね」長造は、癖で指先で丸い頤《あご》をグルグル撫でまわしながら云った。
「お父|様《さん》、こんな家よしちまって、郊外に大きい分離派《ぶんりは》かなんかの文化住宅を、お建てなさいよウ」紅子《べにこ》が、ボッブの頭を振り振り云った。
「洋館だね、いいなア、僕の部屋も拵《こしら》えてくれるといいなア」素六は、もう文化住宅が出来上ったような気になって、喜んだ。
ミツ坊までが、若いお母アちゃんの膝の上で、ロボットのようにピンピン跳ねだした。
「贅沢《ぜいたく》を云いなさんな」長造は微苦笑《びくしょう》して、末ッ子達を押《おさ》えた。
「お父様は、お前達を大きくするので、一杯一杯だよ。皆が、もすこししっかりして、心配の種を蒔《ま》かないで呉れると、もっと働けて、そんなお金が溜《たま》るかもしれない。これ御覧、お父様の頭なんざ、こんなに毛が薄くなった」
父親が見せた頭のてっぺんは、成る程、毛が薄くなって、アルコールの廻りかけているらしい地頭《じがしら》が、赤くテラテラと、透いて見えた。
「お父|様《さん》、そりゃ、お酒のせいですよ」黄一郎がおかしそうに口を
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