太い火柱《ひばしら》が、サッと突立《つった》ち、爪先から、骨が砕けるような地響が伝《つたわ》って来た。そして人間の耳では、測量することの出来ない程大きい音響がして、真正面から、空気の波が、イヤというほど、弦三の顔を打った。
爆弾が落ちたのだ!
イヤ、敵機が、爆弾を投げつけたのだった。
バラバラッと、礫《こいし》のようなものが、身辺《しんぺん》に降って来た。
照空隊の光芒《こうぼう》は、異分子《いぶんし》の侵入した帝都の空を嘗めまわした。
その合間、合間に、高射砲の音が、猛獣のように、恐ろしい呻り声をあげた。
それは、人間の反抗感情というのでもあろうか。爆弾の音を聞かされ、照空灯のひらめきを見せられた弦三は、自分の使命のことも何処へか忘れてしまい、
「畜生! 畜生!」と独《ひと》り言《ごと》を云いだしたかと思うと、矢庭に側の太い電柱にとびつき、危険に気がつかぬものか、
「わッしょい、わッしょいッ」と、背の高い、その電柱の天頂《てっぺん》まで、人技とは思われぬ速さで、攀《よじのぼ》っていった。
そこは、帝都のあっちこっちを見下ろすに、可也《かなり》いい場所だった。眺めると、帝
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