納《けんのう》した十五機から成る東京愛国飛行隊は、どうしているであろうか。
嵐の前の静寂《せいじゃく》!
帝都の夜空は、漆《うるし》のように、いよいよ黝々《くろぐろ》と更《ふ》けていった。
空襲葬送曲《くうしゅうそうそうきょく》
非常管制の警報が出たのは、それから三十分ほど、後《あと》のことだった。
一等速く、民家に達したのは、電灯による警報だった。
「おい、お妻」と鼻緒問屋の主人、長造は暗闇の中で云った。
「お前、今、時計を見なかったか」
「いいえ、暗くなったんで、判りませんわ」
「非常管制の警報らしいが、何分位消えているんだっけな」
「お父さんは、忘れっぽいのね。三十秒の間消えて、また三十秒つき、それからまた三十秒消えて、それからあと、ずっと点《つ》くのですよ」
「感心なもんだな、覚えているなんて――」
三十秒経ったのか、電灯がパッとついた。
「今度は時計を見てるよ。これで三十秒経って消えたら、いよいよ本物だ」
「呀《あ》ッ、消えましたわ」
お妻の声には恐怖の音調が交っていた。
間もなく、電灯は再び点いた。
「ほうら、見なさい。いよいよ非常管制だ。ははァ
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