だよ」
小学生たちは、学校の先生に教わったとおりに、電灯が消えたので、面白がっていた。
電灯が消えると、俄《にわ》かに聴力が鋭敏になったのだった。いままで聞こえなかった半鐘《はんしょう》の音が、サイレンに交って、遠近《えんきん》いろいろの音色をあげていた。
「ジャーン、ジャンジャンジャン」
「ボーン、ボンボンボン」
下町の木工場の、貧弱なサイレンも、負けず劣らず、喚《わめ》きつづけていた。
「呀ッ、電灯が点いたッ」
誰の目も、電灯の光を見上げて、嬉しそうに笑った。ほんとに光りは、人間にとって、心強いものだった。
下町の表通りを、バラバラと駈け出す一隊があった。
「火を消す用意をして下さい。不用な灯は消して下さい。空襲警報ですよォ」
竿竹と、メガフォンと、赤い布を捲きつけた懐中電灯とで固めた一隊が、町の辻々を、練りまわった。
今、帝都は、敵機の襲撃をうける!
浜松の戦闘機隊は、どうしたであろうか。
追浜《おっぱま》の海軍航空隊は、既に上空めがけて、舞いあがったであろうか。
立川の飛行聯隊の用意は、整《ととの》ったであろうか。
東京市民が、醵金《きょきん》をし合って献
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