米軍がいつまでも、のさばっていたんでは、今後の戦争が非常に、やり憎《にく》い」
「米国の亜細亜艦隊は、通称『犠牲艦隊』じゃというわけじゃったが、中々やりますなア」
「犠牲艦隊じゃったのは四五年前までのことじゃ。日本が東シナ海を、琉球《りゅうきゅう》列島と台湾海峡で封鎖すれば、どんなに強くなるかということは、米国がよく知っている。この辺は、日本の新生命線じゃ。そいつを亜細亜艦隊でもって、何とか再三破ってやらなければ、米国海軍[#「米国海軍」は、底本では「日本海軍」]は安心して、主力を太平洋に向けることができない。艦齢は新しいやつばかりで、ことに航空母艦が二隻もあるなんて、中々犠牲艦隊どころじゃない」
「昨日詳細なる報告が海軍からありましたが」と、又別な参謀が口を切った。「米国の太平洋沿岸で暴れた帝国潜水艦隊の損得比較は、どういうことになりましょうか」
「これはやや出来がよかった」別府将軍は、始めて莞爾《にっこり》と、頬笑《ほほえ》んだ。「伊号一〇二は巧く引揚げたらしいが、行方不明の一〇一と、戦艦アイダホの胴中に衝突して自爆した一〇三とを喪《うしな》ったのに対し、米国聯合艦隊側では、アイダ
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