チ》の列車砲の集中砲火を喰《く》って、その半数以上が一夜のうちにやられたということじゃ。何しろ強風雨のうちだから、空軍は手も足も出ず、さぞ無念じゃったろう」
「閣下。オロンガボオ要塞《ようさい》は、まだ占領出来ませんか」別の将校が訊《き》いた。
「呉淞砲台《ウースンほうだい》のように、簡単にはゆかんようじゃ。海軍でも、早く陥落《かんらく》させて、太平洋に出なけりゃならんのじゃ、何しろ、連日のように最悪の気象に阻止《そし》せられて、頼みに思う空軍は全く役に立たず、そうかと云って、無理に進むと、それ、あの金剛《こんごう》や妙高《みょうこう》のように、機雷をグワーンと喰わなきゃならんで、今のところ低気圧の散るのを待たねば、艦隊は損傷が多くなるばかりじゃ。それがまた、あまり永くは待てんでのう。どうも困ったものじゃ」
「中部シナ方面の戦況は、大分発展を始めたらしいですな」前の参謀が、短い口髭《くちひげ》に手を持っていった。
「だが、どうも感心できん」別府将軍は、トンと卓子《テーブル》を叩いた。「こうなると、戦線が伸びるばかりで、結局要領を得にくくなる。杭州《こうしゅう》や寧波《ニンポー》などに、
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