下室だった。天井は、あまり高くないけれど、この部屋の面積は四十畳ぐらいもあった。そして、この室《しつ》を中心として、隣りから隣りへと、それよりやや小さい室が、まるで墜道《トンネル》のように拡がっているのだった。そして部屋の外には、可也《かなり》広いアスファルト路面の廊下が、どこまでも続いていて、なにが通るのか、軌道《レール》が敷いてあった。地面を支《ささ》える鉄筋コンクリートの太い柱は、ずっと遠くまで重なり合って、ところどころに昼光色《ちゅうこうしょく》の電灯が、縞目《しまめ》の影を斜に落としているのが見えた。どこからともなく、ヒューンと発電機の呻《うな》りに似た音響が聴こえているかと思うと、エーテルの様《よう》な芳香《ほうこう》が、そこら一面に漂《ただよ》っているのだった。時々、大きな岩石でも抛《ほう》り出したような物音が、地響《じひびき》とともに聞えて来、その度毎に、地下道の壁がビリビリと鳴りわたった。
このような大仕掛けの地下室というよりは、寧《むし》ろ地下街というべきところは、いつの間に造られ、一体どこをどう匍《は》いまわっているのであるか、仮りに物識《ものし》りを誇る東京市
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