うに、白い角封筒を取り出した。「海軍省からの、でございますよ」
「なに、海軍省から!」
長造の顔は、サッと青ざめた。
「うむ」
彼は封筒の頭を截《き》ると、一葉《いちよう》の海軍|罫紙《けいし》をひっぱり出した。長造の眼は、釘づけにでもされたように、その紙面の一点に止っていたが、軈《やが》てしずかに両眼は閉じられた。その合わせ目から、透明な水球《みずたま》がプツンと躍りだしたかと思うと、ポロリポロリと足許《あしもと》へ転落していった。
その紙面には、次のような文句があった。
戦死認定通知。
潜水艦伊号一〇一|乗組《のりくみ》
海軍一等機関兵 下田清二
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右は去る五月十日午後四時頃、北米合衆国《ほくべいがっしゅうこく》メーヤアイランド軍港附近に於て、爆雷《ばくらい》を受け大破損《だいはそん》の後《のち》、行方不明となりたる乗組艦と、運命を共にしたるものと信ぜらる。よりて茲《ここ》に本官は戦死認定通知書を送付《そうふ》し、その忠烈《ちゅうれつ》に対し深厚《しんこう》なる敬意を表《ひょう》するものなり。
昭和十×年五月十三日
聯合艦
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