ニュースの内容は一変したのだった。
「米国《べいこく》の太平洋艦隊は、今や大西洋艦隊の廻航を待ちて之《これ》に合せんとし、其《そ》の主力艦は既に布哇《ハワイ》パール湾[#「パール湾」は底本では「ハール湾」]に集結を了《りょう》したりとの報あり!」
「布哇《ハワイ》の日系米人、騒がず」
「墨西哥《メキシコ》の首都附近に、叛軍《はんぐん》迫《せま》る、一両日中に、クーデター起るものと予測さる」
「英《えい》、仏《ふつ》両国は中立を宣言す」
「注目すべきレニングラードの反政府運動」
「中華民国も一《ひ》と先《ま》ず中立宣言か」
「上海《シャンハイ》に市街戦起る、○○師団、先ず火蓋を切る。米国空軍は杭州《こうしゅう》地方に集結」
東京市民は、我が軍に関するニュースの少いのに不満であった、それは恐らく、全国民の不満であるに違いなかった。ことに、太平洋方面に戦機を覘《うかが》っている筈の、帝国海軍の行動について、一行のニュースもないのを物足りなく思った。
どこからともなく、流言《りゅうげん》が伝わり出した。東京市民の顔には不安の色が、次第にありありと現われて来た。誰しも、同じような云いたいこと
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