図《ふと》、そんなことを考えたのだった。
それから後は、話にならないほどの、単調な日が続いた。
昼間は、絶対に水上へ浮びあがらなかった。その癖《くせ》、電動推進機には、いつも全速力がかかっていた。夜間になると、時々ポカリと水面に浮かんだが、それも極く短時間に限られていた。それはまるで乗組員を甲板に出して、深呼吸をさせるばかりが目的であるとしか思えなかった。だがその目的も充分には達せられなかったようだった。というのは、なにか見えるだろうと喜び勇《いさ》んで甲板に出てみても、いつも周囲は真暗な洋上で、灯台の灯も見えなかった。或る晩は、銀砂《ぎんさ》を撒《ま》いたように星が出ていたし、また或る夜はボッボツと、冷い雨が頬の辺を打った、それが一番著しい変化だった。長大息《しんこきゅう》を一つすると、もう昇降口から、艦内へ呼び戻されるという次第だった。
夜間の航行は、実に骨が折れた。艦長は、精密な時計と、水中聴音機《すいちゅうちょうおんき》とを睨《にら》みながら、或るときは全速力に走らせるかと思うと、また或るときは、急に推進機を全然停止させて、一時間も一時間半も、洋上や海底に、フラフラと漂《
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