しかし博士は謙遜《けんそん》されて申されます。怪力線はほんのお手伝いをしたのに過ぎない。本当に外敵《がいてき》を撃退し得た力は、伝統を誇るわが陸海軍々人の勇敢なる戦闘力と、その背後に控えた国民の覚悟と協力、ことに防空問題についての理解と準備とが十二分に行われた結果であると申されます。その辺の判断は、皆さんのお心委《こころまか》せとし、いまや太平洋を征服し、東洋民族の盟主《めいしゅ》として仰がれることになりました新日本の光輝《こうき》ある黎明《れいめい》を迎えるに当り、その尊《とうと》き犠牲となったわが戦士と不幸な市民たちを弔《とむら》い、又アメリカ主義に患《わずら》わされて西太平洋の鬼となった米軍の空襲勇士たちのために、前に聞かせて頂いた空襲葬送曲を、唯今《ただいま》放送を以て、遠く米国本土にまで、お返ししようと思うのでございます。――」
 ショパンの、腸《はらわた》を断《た》つような、悲痛なメロデーに充ちた葬送行進曲が、ピアノの鍵盤《キイ》の上から、静かに響いて来た。
 涙をソッと押さえてJOAKのスタディオに弾《だん》ずるのは、奇しい運命の下に活躍した紅子《べにこ》だった。僅《わず
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