ヤ、これは……。おう、プロペラの音が聞こえる」
「ああ、見える、見える。一つ、二つ、三つ……」
「方角は、真東《まひがし》。おや、こっちの方にも聞こえる。三ちゃん。船神磯《せんじんいそ》の方には、何か見えないかい」
「船神磯の方? ああ、来たよ来たよ。飛行船が三つ――随分高く飛んでいるよ。おじいちゃん、電話を懸けていい!」
「そうじゃ、そうじゃ。間違うといけないから、落着いて掛けるのだよ」
櫓《やぐら》の上《うえ》に、リリリリンと、可愛いい呼鈴《よびりん》の音がした。盲目の老人と、幼い子供の協力によって、警報は発せられた。真東から襲いかかるは、太平洋戦|崩《くず》れの、爆撃隊であろう。北の方から、しずしずと下って来るのは、アラスカを通ってきた飛行船隊に違いない。磯崎岬《いそざきみさき》の、この可憐《かれん》なる防空監視哨は、思い懸けない大手柄を樹《た》てた。少くとも三百万の帝都人は、直ちに、避難と防毒の手配に着手することができた。所沢《ところざわ》と立川《たちかわ》との飛行聯隊、霞《かすみ》ヶ|浦《うら》と追浜《おっぱま》の海軍航空隊、それから東京愛国防空隊の二十機は、一斉に飛行場か
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