って即死し、同乗して居りました工藤書記長、小柳秘書及び相沢運転手の三人も同様即死いたしました。兇行の目的は、協議妨害《きょうぎぼうがい》にあることは明《あきら》かであります。以上。
次は居留邦人《きょりゅうほうじん》の激昂《げっこう》のお話。
この報至るや、居留邦人は非常に激昴しまして、其の場に於て、決死団を組織し、暴行団員が引上げたと思われる共同租界内のホテル・スーシーを包囲した揚句《あげく》、遂《つい》に窓|硝子《ガラス》を破壊し、団員四名を射殺し、一名を捕虜といたしました。他は其場《そのば》より遁走《とんそう》いたしました。これに対して○国人側も非常に怒り、復讐を誓って、唯今準備中であります。両国の外交問題は、俄然《がぜん》険悪《けんあく》となりました。以上。
尚《なお》追加ニュースがある筈でございますから、この次は、どうぞ八時三十分をお待ち下さいまし。JOAK」
アナウンサーの声は、高声器のなかに消えた。一座は急にざわめき立った。
「えらいことになったね」黄一郎が真先《まっさき》に喚《わめ》いた。「これは鳥渡《ちょっと》解決しませんぜ」
「また戦争かい」母親が心配そうに
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