この調子でつっぱしらせてようございますか」
「構わん、やれッ」
「承知しましたッ」運転手は巧みに把手《ハンドル》を操《あやつ》った。彼の頸筋《くびすじ》には、脂汗《あぶらあせ》が浮んで軈《やが》てタラタラ流れ出した。
 距離はだんだん迫って来た。
 二千メートル、千メートル、五百メートル……。
「呀ッ、『狼《ウルフ》』の奴だ!」帆村が躍りあがって叫んだ。
「なに、ウルフかッ」大尉は叫んだ。「後藤、力一杯ブレーキをかけて左側の水田《すいでん》の中へ自動車を入れろッ」
 そう命令すると、大尉は座席の横から一|抱《かか》えもある鎖《くさり》を、車外《しゃがい》に抛《ほう》り出《だ》した。途端に、車体はぐぐッと曲った。そして、大きな水煙りをあげると、どすンと水田の中に、急停車した。
「それッ、皆、飛び出せッ」
 出てみると、そこから三百メートルと距《へだ》っていないところに「狼《ウルフ》」の乗っていた牛乳自動車が車輪に釘《くぎ》の出ている鎖《くさり》を搦《からま》せ水田の中に頭部を突入して動かなくなっていた。
 駈けつけてゆく裡《うち》に、牛乳車の函車《はこぐるま》が内からパクリと開いて牛乳缶
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