拾って通報したのは女性なのかい。しっかりした女だなア」
「……」探偵は無言で微苦笑《びくしょう》をした。「僕は結局大した働きもしませんでしたよ。磯崎《いそざき》のジュラルミン工場のオヤジが、狼《ウルフ》であることを偶然発見したこと位です」
「あれは特筆すべきお手柄だったが、よく判ったものだね」
「草津大尉どの。太平洋戦争の其後の模様はどうなりました?」
「偵察機隊が火蓋を切ったそうだ。海軍の策戦《さくせん》が図に当って、敵軍は稍疲《ややつか》れが見えるそうだ。しかし勝敗はまだどこへ行くとも判っていない。だが少くとも戸波博士を、ここ一二時間の裡《うち》に奪還できない限り、帝国の勝算は覚束《おぼつか》ない」
「先生を悪人が殺すようなことは、無《ね》ぇでしょうか」
 山太郎が又心配した。
 このとき前方に注目していた帆村探偵が、突然叫んだ。
「草津さん、妙なものが、向うからやって来ますぞッ」
「ほほう、ありゃ牛乳運搬自動車らしいな」
「ところが大尉どの、御覧なさい、牛乳車の癖に莫迦《ばか》にスピードを出していますよ」
「五十|哩《マイル》は出していますよ」運転手が云った。「すこし危いですが、
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