っと東洋遠征に誤算のあったことを気付いた。と云って、此処《ここ》まで来て引上げることは許されないことであった。ブラック提督は、海軍の敗戦を、何とかして、空軍の強襲によって、取戻そうと決心した。
 彼は厳然《げんぜん》たる威容を、とりもどして、即時全空軍に命令を発した。
「今より吾が米国聯合艦隊所属の空軍二千機は、一機をも剰《あま》すところなく直ちに艦上を離れ、空中に於て強行戦闘隊形を整《ととの》え日本艦隊及びそれに属する空軍とを撃破し、以て吾が艦隊の不利なる戦績を救済《きゅうさい》すべし。尚《なお》余力《よりょく》あるに於ては、長駆カシマ灘《なだ》よりトーキョー湾に進撃し、首都トーキョー及びヨコハマの重要地点を攻撃すべし。ブラック提督」
 この一大決心を含めた命令が各隊に伝わると、飛行隊の将卒は、非常なる感激に打たれた。六対十の比率に安心していたのも空《むな》しく、今自分達が出て奮戦しないと、この儘《まま》懐しい故郷へ帰れないことになるらしいのであった。残された唯一つのチャンスを掴《つか》むことについて、不熱心になるものは誰一人として無かった。
「さア、ジャップの奴を、のしてしまえ」

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