ていた飛行機を送り出すと、手際《てぎわ》も鮮《あざや》かに、再び水底深く潜航して行った。
 潜水艦から離れた艦上機の操縦席についていたのは、別人《べつじん》ならぬ花川戸《はなかわど》の鼻緒問屋《はなおどんや》の二番息子の直二《なおじ》であった。前に戦死と認知《にんち》されて、死亡通知の発せられた幽霊人《ゆうれいじん》だった。しかし彼は傷《きずつ》いた艦と共に、辛苦を分かち、墨西哥《メキシコ》の某港《ぼうこう》によって秘かに艦の修理に従事し、その完成を待って、再び太平洋の海底にもぐり、僚艦と一緒に、秘密の行動についていたのであった。
 直二と先任将校の乗っている艦上機は、予定通り、近所を航進中の、駆逐艦|山風《やまかぜ》に救い上げられた。山風は直ちに隊列を離れて、旗艦陸奥《きかんむつ》に向けて急航して行った。やがて彼等は、大鳴門《おおなると》司令長官の前に立って、米国艦隊の退路を絶つ機雷の敷設《ふせつ》状況と、なお布哇《ハワイ》攻略の機が如何に熟しているかを、審《つぶ》さに報告することであろう。
 それは後のこととして、主力艦を瞬時《しゅんじ》の裡《うち》に、三隻までも失った米艦隊は、や
前へ 次へ
全224ページ中205ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング