て忍びないです」
「ああ、兄さんも、お父さんも、ありがとう。どっちも、三吉の身の上を、それぞれ思っていて下さるのです。あたしは決心しました。三吉も、お祖父さんと行きたいと云っている位だから、あたしは母親として、それを許しますわ。今は、日本の国の、一つあっても二つあるとは考えられない非常時です。この磯崎では、一人の三吉を不憫《ふびん》がっていますけれど、あすこから電話線を伝《つた》って行ったもう一つの端の東京には、三吉みたいな可愛いい子供さんが何十万人と居て、同じようにアメリカの爆弾の下に怯《おび》えさせられようとしているんです。そのお子さん達の親たちは、お父さんも、あたしのような母親も、どんなにかせめて子供達だけにでも、空襲の恐怖から救ってやりたいと考えていらっしゃるか知れないんです。あたしはそれを思うと、その大勢の同胞のために、喜んで三吉を、防空監視哨の櫓《やぐら》の上に送りたいと思います。いいでしょう、兄さん」
「それは立派な覚悟だ」浩は熱い眼頭《めがしら》を、拳《こぶし》で拭《ぬぐ》いながら返事をした。「建国二千六百年の日本が滅亡するか、それとも生きるかという重大の時機だ。私はお
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