てきた。真弓は手短かに、一部始終を兄に話し、紅子の手紙を東京へ電報することを相談した。
「そりゃ訳はないよ」浩は云った。
「丁度《ちょうど》いま、磯崎の防空監視哨と東京の中央電話局との直通電話を架設して来たばかりだ。あれで話せば、直ぐ東京が出る」
「じゃ、あたし直ぐに行ってみますわ」
「うん」
 真弓が外出の支度に、鳥渡《ちょっと》帯を締め直していると、奥の間から、
「鳥渡《ちょっと》、待ってくれんか」
 と声をかけたのは、浩と真弓との父親だった。やがて、建てつけの悪い障子を、ガタガタと開いて、ぎごちない恰好で現れたのは、今年五十九歳になる、両眼の不自由な老父だった。
「お父さん、危いわよ」
 真弓が立って、気の毒な父の手をとった。
「お祖父《じい》ちゃん。先刻《さっき》、大きな自動車が二つも続いて通ったよ。そいでネ、綺麗な箱を、おっことして行ったんだけど、母アちゃんがいけないって、とっちゃったよ」
「おお、そうか、そうか」盲目の祖父は、三吉の声のする方へ手を伸ばした。「三坊、お祖父さんのお膝の上へおいで」
「お父さん、どうかしましたか」浩が怪訝《けげん》な眼を見張って尋ねた。
「おお
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