ジョン送影機《そうえいき》を、モーターボートに積んで、沖合遥かに出て行った。それの後からはボコボコと、エンジンの音を立てて、幾百|艘《そう》となく、うす汚れた和船《わせん》が、同じ方角に出ていったが、これには各々、防空監視員が乗りこんでいた。防空監視員と云っても、完全な男子は出征して国内には居なかったので、四十過ぎの中老組か、二十歳以下の少年か、さもなければ、血気盛んなる妙齢《みょうれい》の婦人達であった。それは見るからに、重大任務をやりとげるのに充分な人達とは、お世辞にも、云えなかったが、壮年男子は、予備《よび》後備《こうび》といわず補充兵役にあるものまでが召集され、北満、極東方面に労農ロシア軍と戦い、或いはフィリッピン群島、東北地方北海道に、米国軍と対峙している今日、贅沢《ぜいたく》を云うわけにはゆかなかった。
 さて問題の、鹿島灘の、一番北の端に、磯節《いそぶし》で有名な三磯《みいそ》の一つ、磯崎町《いそざきまち》というところがあった。ここは、家数が四五十しかない、至って小さい町だった。町というのが多くは漁師の家で、その外には、数年前からジュラルミン工場が建てられたので、その職工
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