いた。
「おい、どうしたのかと云ったら!」
 そういった友人の、情深い手は、紙洗大尉の肩にかけられた。
「うん、大したことでは無い」彼は遂《つい》に口を開いた。「唯《ただ》、天佑《てんゆう》というものが今度の場合にも、お互《たがい》に必要なのだ。いずれ判るだろうがね」
「ははァ、そんなことか」と、千手大尉。
「天佑は迷信ではない。忍耐と努力との極致《きょくち》じゃ」
 藤戸大尉は、帯剣を釣る手を憩《やす》めて何か重大命令を受けて来たらしい僚友に、哲学じみたことを言った。
 外へ出ると、大分風が出ていた。
 雲間からヌッと顔を出した弦月《げんげつ》の光に、高く盛りあがった濤頭《なみがしら》が、夜目にも白々と映った。
 僚艦も稍難航《ややなんこう》の体で、十度ほど傾斜しながら、艦首から、ひどい浪を被っていた。


   鹿島灘《かしまなだ》の護《まも》り


 いよいよ米国大空軍の来襲は、確かになった。
 早ければ今夕、遅くとも明日の夕刻までには、敵影が鹿島灘《かしまなだ》に現れることになろうと云うことであった。これは全国一斉に、ラジオによってアナウンスされた。新聞記者は、命懸けのテレヴィ
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