ボーン大佐以下は、大きな錯覚《さっかく》をしていたのだった。それは、大東京だと思って、爆弾の雨を降らせた一廓は、帝都とは似てもつかぬ草原と田畑だったのだ。それは帝都を、二十キロほど、東へ行ったところにある市川《いちかわ》町の附近を択んで、軍部が急造した偽都市《にせとし》だったのであった。その市川の草原には、松戸《まつど》工兵学校や、千葉鉄道聯隊や、世田《せた》ヶ|谷《や》自動車隊が、一夜のうちに急造した電灯装置ばかりの偽東京が、影も形もないほど、爆撃しつくされてあった。
偽都市が成功したその反面には、其の夜、帝都の、灯火管制が、如何に巧みに行われて敵機の眼から脱れることに成功したかを、雄弁に物語っているので、その夜の勲功の半分は軍部が担《にな》い、他の半分は、帝都市民が貰うのが至当であると面白いことを云ったのは、外ならぬ東京警備司令官、別府九州造《べっぷくすぞう》氏であった。
戦雲《せんうん》暗《くら》し太平洋
わが海軍の主力、聯合艦隊は、小笠原《おがさわら》諸島の東方、約一千キロの海上を、真北に向って進撃中であった。
珍らしや、聯合艦隊!
日米国交|断絶《だんぜ
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