――用事があって、地下室へ降りて来た戸波博士は、待ち構えていた怪しい一団の手によって、何の苦もなく、誘拐《ゆうかい》されたことは、山太郎の説明によって、間もなく、明かになった。
 軍部は、この凶報《きょうほう》を受取ると、愕然《がくぜん》と色を失ってしまった。


   アクロン号の襲来《しゅうらい》


「モンストン君、まだ何にも、見えないのかい」
 アクロン号の船長、リンドボーン大佐は、航空羅針儀《こうくうらしんぎ》の面《おもて》から眼を離すと、背後を振りかえって、爆撃隊長モンストン少佐に声をかけた。
「大佐殿、いよいよ、大東京です」少佐は、地上観測鏡の対眼レンズから、眼を離そうともせずに、叫んだ。「猫眼石《ねこめいし》のように美しい輪廓が、空中に、ぼッと、浮かびあがっています」
「羅針儀《らしんぎ》も正確だ」大佐は、硝子蓋《ガラスぶた》の上を、指先で、コツコツと叩いた。「時間も、予期したとおり午前一時、淋代《さびしろ》から、正《まさ》に六時間半、経《た》った」
「左の方には、正しくカスミガウラの湖面が光っています」少佐は、やっと面をあげて、ゴンドラの外を、指さした。
「爆撃の用意
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