が出動したそうだ」
「ああ、そうですか」
「あの広い貯水池の水面に、すっかり、藁《わら》を敷《し》くのは、想像しただけでも、容易ならん仕事だと思うね」
「でも、藁を敷いて、水面の反射を消すとは、誰が考えたのかしりませんが、実に名案ですな」
「隅田川へ敷くのについて、非常に幸運だったというのは、今夜十二時頃から、次第に、上げ潮になって来るそうで、水面《すいめん》へ抛《ほう》りこんだ藁が、流出せずに、済むそうだ」
「なるほど、そうですか。これも天佑《てんゆう》の一つでしょうな」自動車隊は、暗闇の中を、なおもグングンと、驀進《ばくしん》して行った。
「大尉どの、いよいよ、穴の奥まで、近づいたらしいですよ」
「そういえば、だんだんと天井が、低くなってきたね」
「入口で、三人、やっつけたばかりで、ここまで来ても、更に敵影《てきえい》を認《みと》めず、ですな」
「ちと、おかしいね。どこか、逃げ道が、慥《こしら》えてあるのだろうか」
「いままでのところには、探さない別坑《べつこう》は、一つもなかったのですが」
「おや、地盤が、急に変ったじゃないか。これは、燧石《ひうちいし》みたいに硬い岩だ」
草
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