《たず》ねた。
「先行したいのは、山々だが、本隊との連絡が、つかなくなるのを恐《おそ》れる」
「なにしろ、電灯器具材料を積んでいますから、四十|哩《マイル》以上の速度《スピード》を出すと、壊れてしまう虞《おそ》れが、あるのです」
「兎《と》に角《かく》、弱ったね。すこし準備が、遅すぎたようだ」
「ですが、目的地の市川《いちかわ》へは、八時までには充分着きますから、アクロン号の襲来するのが、十二時として、四時間たっぷりはございますですが」
「四時間では、指揮をするだけでも、大変だぜ」
「松戸《まつど》の工兵学校は、もう仕事を終えている頃ですから、直ぐ応援して貰ってはどうです」
「工兵学校も、いいが、俺は、千葉鉄道聯隊の連中を、あてにしているのだ」
 何事だか、まだ判らないけれど、とにかく帝都から、程遠《ほどとお》からぬ市川町附近へ、多数の特科《とっか》隊が、夥《おびただ》しい材料をもって、集合を開始しているものらしい。
「大尉どの」闇の中から、山中中尉の声がした。
「うん」
「思い出しましたが、村山貯水池の方は、誰か行くことになっていましたでしょうか」
「村山貯水池は、臨時に、中野電信隊
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