るようだわ」
「もっと、えらいことが、あるんだぜ」
「早く言ってしまいなさいよ。オーさん」
「飛行船隊の中から、一隻、アクロン号というのが、陸奥湾《むつわん》を横断して、唯今、野辺地《のへじ》の上空を通っているのだ」
「どこへ、逃げてゆくのかしら」
「莫迦《ばか》だなア、君は。アクロン号は、東京の方へ、頭を向けているのだよ」
「じゃ、また東京は、空襲を受けるの」
「どうやら、そうらしいというのだ。警戒しろということだ」
「いやァね。あたし爆弾の光が、嫌いだわ」
「誰だって嫌いだよ」
「でも、今夜は、大丈夫なんでしょうね」
「ところが、今夜が危いのだ。一時間百キロの速度で飛んでいるから、真夜中の十二時から一時頃までには、帝都の上空へ現れるそうだよ」
「どうして、途中で、やっつけちまわないんでしょうね」
「あっちは、飛行機では、載《の》せられないような、大きな機関砲を、沢山持っているんだ。こっちの飛行機が、近づこうとすると、遠くからポンポンと射ち落しちまうんだ」
「高射砲で、下から射ったら、どう」
「駄目だ。ウンと高く飛んでいるから、中々届かない」
「じゃ、上から逆落《さかおと》しかなんか
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