のを、知ることが出来たのです。帆村君は、思う仔細《しさい》があって、今朝、紅子と手を取って、勇敢にも、大混乱の市内へ、飛び出して行ったのです。正午近くになって、わたくし達の、偵察機が、神田上空を通るとき、運よく、帆村君の、反射鏡信号を、発見したというわけです」
 中佐は、語り終って、額《ひたい》の汗を、拭った。
「帆村君」司令官は、厳粛《げんしゅく》な態度のうちに、感激を見せて、名探偵の名を呼んだ。「いろいろと、御苦労じゃった。なお、これからも、お骨折りを、願いまするぞ」
「はいッ。愛する日本のためであれば、ウーンと、頑張《がんば》りますよ」
 日頃冷静な帆村探偵も、このときばかりは、両頬を、少女のように、紅潮させていた。
「それでは、戸波博士のことは、よくお願いいたしますよ」
「わかりました」司令官は、大きく肯《うなず》いた。「草津参謀。君は、麻布《あざぶ》第三聯隊の一個小隊を指導して、直ちに、お茶の水へ出発せい」
「はいッ。草津大尉は、直《ただ》ちに、お茶の水の濠端《ほりばた》より、不逞団の坑道を襲撃いたします。終り」
「うむ、冷静に、やれよ」
 草津大尉は、側《かたわ》らの架台《
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