げるもののようであった。そういえば、湯河原中佐が、秘かに、司令官の室内に忍びこみ、鍵らしいものを盗んで、地下街の一隅に設けられた秘密の鉄扉《てっぴ》を開き、その中に姿を一時隠したことがあった。彼は、誰にも話の出来ない或る重大任務を、遂行して、国家の危機を、間一髪に、救ったのだった。その内容については、司令官と中佐と、外に数名の当事者以外には、誰も知らないことで、筆者《わたくし》も、それ以上、書くことを許されないのである。
兎《と》に角《かく》、それは、三千年の昔より、神国《しんこく》日本に、しばしば現れたる天佑《てんゆう》の一つであった。
「帆村君は、もう一つ、大きな秘密を、探《さ》ぐり出したのです」中佐は、夢から醒《さ》めたように、語をついだ。
司令官は、静かに、喘《あえ》いだ。
「それは、G《ゲー》・P《ペー》・U《ウー》が、次に計画しつつあるところの陰謀であったのです。だが、鬼川自身も、こっちの方については、あまり詳しいことを知っていなかったのです。唯《ただ》、戸波博士の研究所が覗《ねら》われていること、研究所襲撃の手段として、坑道を掘り、地下から、爆破しようという計画のある
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