れは、帆村君が研究している読心術ですな。丁度《ちょうど》、塩原参謀が、その少女と、瀕死《ひんし》の重傷を負っていた弟の素六《そろく》というのを、放送局舎の中から助け出したんです。帆村君は、その少女を見て、駭《おどろ》いたそうです。何でも前から知合いだったそうで……。紅子という少女は、非常に感動しやすい、どっちかというと、我儘《わがまま》も強い方の女性でした。そんな人は、読心術の霊媒《れいばい》に使うと、非常に、うまく働くんだそうです。早く云うと、帆村君は、紅子を昏睡《こんすい》状態に陥し入れ、その側へ、猿轡《さるぐつわ》をした鬼川を連れて来、紅子を通じて、鬼川の秘密を探らせたのです」
「そんなことが、出来るものかな」司令官は不思議そうに云った。
「帆村君に云わせると、いい霊媒《れいばい》を得さえすれば、わけのない事だそうです。いわば、鬼川の身体は、不逞団《ふていだん》の秘密という臭気《しゅうき》を持っているのです。紅子の方は、それを嗅《か》ぎわける、鋭い鼻のようなものです。常人には、嗅いでもわからないのに、特異性をもった紅子のような霊媒を使うと、わかるんです」
「帆村君は、それで、何を
前へ 次へ
全224ページ中151ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング