帆村探偵が、此《こ》の室《しつ》に、姿を現わしたのは、それから五分と経たない後だった。
「赤外線写真は、どうでした?」彼は、司令官達に、敬礼を済ませるが早いか、気になることを尋《たず》ねた。
「うまく出たようだ。ここにある」湯河原中佐が、クルクルと捲《ま》いてある細長い印画紙《いんがし》を机の上に、展《ひろ》げて見せた。
「ははァ、よく判りますね」と、帆村探偵はお茶の水に近い濠端《ほりばた》の、ある地点を指して、云った。「肉眼で見たのでは、なんの変りもない草叢《くさむら》つづきですが、斯《こ》うして、赤外線写真にとって見ると、どこに、坑道の入口があるか、直ぐ判りますね」
「だが、よくまア、坑道のあることが、判ったものだね」司令官が、感心をした。
「それは、帆村君の手腕ですよ」中佐が、代りに説明した。「空襲の夜、放送局を占領した不逞団《ふていだん》の頭目に鬼川《おにかわ》という男が居りました。これを捕縛《ほばく》して、帆村君に預けたのです。すると帆村君は、紅子《べにこ》という少女を使って、鬼川が知っている団の秘密をすっかり聞いてしまったのです」
「少女紅子を使ったというのは?」
「そ
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