三隻海軍にあったが、それは、鷲《わし》の側によった雀《すずめ》にも及ばなかった。
 兼《か》ねて、襲来するかもしれないと思われていたのであるが、いま斯《こ》うして、北海道と、青森県の、ほぼ中間を覘《ねら》って、大挙襲来しているのを知っては、流石《さすが》に、戦慄《せんりつ》を感じないわけに行かなかった。
(あの尨大《ぼうだい》な爆弾を、どこに落すのだろうか?)
 恐《おそ》らく合計して百|噸《トン》の上にのぼる、爆弾だった。帝都でさえ五|噸《トン》の爆弾で、灰燼《かいじん》になる筈であった。百噸を一度に投下するときは、房総半島《ぼうそうはんとう》なんか、千切《ちぎ》れて飛んでしまいそうに、思われた。
 この戦慄《せんりつ》に値《あたい》する報告書を前に、司令部の幕僚は、流石《さすが》に黙して、何も語らなかった。果して彼等の胸中には、勝算ある作戦計画が秘められているのであろうか。それとも、戦慄の前に最早《もはや》言葉も出《い》でないのであろうか。
 そのとき、卓上電話のベルが、ジリジリと鳴った。
「なに、帆村君か」
 湯河原中佐が、大きい声を出した。
「閣下も、お待ちかねだ。早く来給え」
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