分、東北東に向って三十五キロの距離に於て、米国空軍に属する飛行船隊の航空せるを発見せり。該《がい》飛行船隊は、アクロン、ロスアンゼルス、パタビウス、サンタバルバラの順序を以て、高度七千メートル、時速百八十キロ、略西方《ほぼせいほう》に向けて航空中なり。尚《なお》、該隊《がいたい》には、先導偵察機五機、戦闘機十四機を、随行《ずいこう》せしめつつあり。終り」
 これを聞いた将校たちは、互《たがい》に顔を見合わせたのだった。いよいよ、恐ろしい怪物が、襲来《しゅうらい》してくるのだった。飛行船といえば、ツェッペリン伯《はく》号を、帝都上空に仰いだことのある日本国民だった。ロスアンゼルス号は[#「号は」は底本では「号」]ツェッペリン伯号の姉妹船、アクロン号、サンタバルバラ号は、それよりも二倍近い、巨大なもの、パタビウス号に至っては、空の帝王と呼ばれる途方もなく尨大《ぼうだい》な全鋼鉄の怪物で、爆弾だけでも、五十|噸《トン》近く、積みこんでいるという物凄《ものすご》い飛行船だった。
 日本陸軍にも、海軍にもこれに比敵《ひてき》する飛行船は、一|隻《せき》もなかった。極《ご》く小さい軟式飛行船が、二
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