る十五キロの地点にまで進出せり。目下、彼我《ひが》の空軍並に機械軍の間に、激烈なる戦闘を交《まじ》えつつあり。就中《なかんずく》、右翼|竜山師団《りゅうざんしだん》は一時苦戦に陥《おちい》りたるも、左翼|仙台《せんだい》師団の急遽《きゅうきょ》救援砲撃により、危機を脱することを得たり。終り」
「労農軍は、いよいよ味なことを、やりよるのう」司令官は、髯のところに、手をやった。
「閣下」と呼んだのは、草津参謀だった。「市川町《いちかわまち》附近の準備は唯今を以て、完成いたしました。連絡通信の方も、故障なく働作《どうさ》いたします」
「そうか」と将軍は顔をあげて云った。「儂《わし》の考えでは、今夜が最も危険じゃ。もう一度、宇都宮以北の防空監視哨へ、警告を発して置け」
「はッ、承知いたしました」
 そこへ、バタバタと、伝令が、電文を握ってきた。
「報告です」
「よオし。こっちへ貸せ」有馬参謀長は、多忙であった。「おお、これは……」
 参謀長は、キッと唇を噛んだ。
「閣下。海軍からの報告です。北緯《ほくい》四十一度|東経《とうけい》百四十度を航行中なる第五潜水艦隊の報告によれば、本日午後四時十五
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