を発見す


 地下街の司令部では、印刷電信機が、リズミカルな響をあげて、各所の要地から集ってくる牒報《ちょうほう》を、仮名文字《かなもじ》に打ち直していた。
 事態は、刻々に、うつりかわって、北満、朝鮮国境からの通信が、いつもの二倍になり三倍になり、尚《なお》もグングン殖えて行った。電信機は、火のように熱して来た。側に立っている通信兵員はシリンダーや、歯車のあたりに、絶えず滑動油《マシンゆ》を、さしてやるのであった。
「次は北満軍司令部からの、報告であります」有馬参謀長は、本物の別府司令官の前に、直立した。「金沢、字都宮、弘前《ひろさき》の各師団より成る北満軍主力は、本日午後四時をもって、興安嶺《こうあんれい》を突破せり。これより、善通寺《ぜんつうじ》支隊と呼応し、海拉爾《ハイラル》、満州里《マンチュリ》方面に進撃せんとす。終り」
 別府司令官は、静かに肯《うなず》いた。
「今一つは、極東軍の報告であります」有馬参謀長は、もう一枚の紙を、とりあげた。「仙台《せんだい》、姫路《ひめじ》、竜山《りゅうざん》各師団よりなる極東軍主力は、国境附近の労農軍を撃破し、本日四時を以てニコリスクを去
前へ 次へ
全224ページ中146ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング