づき、国際的陰謀の謎を、解きつつあった。「男爵」と呼ばれる彼の本名は、帆村荘六。軍部に属する特務機関としての記号をM13[#「13」は縦中横]という。このところ、数年の間に、めきめきと売出した若手の私立探偵であった。
記憶のよい読者は、彼が、いつの間にか、東京警備司令部の地下街に忍びこんでいたことや、今朝方のこと、お茶の水附近で、湯河原中佐や塩原参謀の乗っていた偵察機《ていさつき》に、赤外線写真の撮影を依頼したことを、思い出されるに違いない。
帆村探偵の任務は、大日本帝国の体内に潜行している労農《ろうのう》ロシアの特別警察隊、G《ゲー》・P《ペー》・U《ウー》の本拠をつき、「狼《ウルフ》」といわれる団長以下を、捕縛《ほばく》するのにあった。その「狼」は紅子《べにこ》を伴って歩いているらしい話であったが、彼こそは、先に、東京警備司令官|別府九州造《べっぷくすぞう》に変装してマニラ飛行聯隊空襲の夜の、帝都警備権を、自分の掌中に握っていた怪人物だった。
帆村探偵対「狼《ウルフ》」の、血飛《ちと》び肉裂《にくさ》けるの争闘は、漸《ようや》く機が熟してきたようであった。
飛行船隊
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