ょう》さでもって、内懐《ふところ》から、黄色い手袋を出して嵌《は》め、そしてどこに隠してあったのか、マスクをひょいと被ると、例の封筒を指先で摘《つま》みあげて、端の方を、鋏《はさみ》で、静かに截《き》り開《ひら》いた。封筒の中からは、四つに折畳《おりたた》んだレターペーパーと、百円紙幣とが出て来た。紙幣の方は、そのまま、封筒にかえし、彼は手紙の方をとりあげて、おそるおそる開いた。
(ちえッ。白紙《しらがみ》でやがる!)
彼は、何にも文字の書いてない白紙を卓子《テーブル》の上に拡げると、衣嚢《ポケット》の中から、青い液体の入った小さい壜を取出した。その栓《せん》をぬいて紙面に、ふりかけようとした。丁度《ちょうど》、そのときだった。
「ピューッ、ピューッ」
と、窓外に、口笛が鳴った。
青年は、ひどく周章《あわ》てて、席を立とうとしたが、卓上の、手紙などを、懐中に入れようか、どうしようかと、躊躇《ちゅうちょ》した。が結局、手紙も、金も、小壜まで、そのままにして、カーテンの外へ、駈け出していった。
それと入れちがいに、大きな坊主頭が、ニュッと、カーテンの中に入ってきた。彼は素早く、封筒
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