曹長、機首を右に曲げ、航路外に出で、二分間したら、元の場所へ帰って来るんだ。それから空中撮影を始めるから、外濠について、廻ってゆくこと。速度は五十キロまで下げるんだぞ」
「判りました」曹長は、ハッキリ答えて、急旋回の合図を、後についてくる僚機の方にした。
「塩原君」と、中佐は始めて、参謀の方を向いて、莞爾《にっこり》とした。「今夜あたり、面白い話が聞けるかも、知れないよ」
帆村探偵《ほむらたんてい》対《たい》狼《ウルフ》
神田駿河台《かんだするがだい》は、俗に、病院街《びょういんまち》といわれる。それほど、××産婦人科とか、××胃腸病院とか、××耳鼻医院とか、一々名を挙げるのに煩《わずら》わしいほど、数多《あまた》の病院が、建てこんでいた。しかし事実は、病院だけでなく、学校と研究所も少くないところであった。それ等の建物は、多くは三層又は四層の建築となっていて、病室の多い病院と間違えられるような恰好をして並んでいた。しかし数の方からは何と云っても病院の方が多く、そこから白いシーツなどがヒラヒラと乾されているのが、兎角《とかく》通行人の目につきやすく、病院街と呼ばれることに
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