せっかく》飛行命令が出たのに、求める敵機の、姿も影も見当らないのを、残念がった。
「おお、あれは何だろう!」
突然、眼のいい塩原参謀が、怒鳴《どな》った。
「なに※[#感嘆符疑問符、1−8−78]」中佐は、参謀の指す彼方《かなた》を、注視した。
「御覧なさい、中佐殿。お茶《ちゃ》の水《みず》の濠《ほり》の中から、何か、キラキラ閃《ひらめ》いているものがあります」
「なるほど、何か閃いているね。おお、君あれは、信号らしいぞ」
「信号ですか」参謀は、双眼鏡をあてて、その閃いているものを注目した。
ピカ、ピカ、ピカ、ピカーッ、ピカ。それを繰返している。それは聖橋《ひじりばし》と、お茶の水との中間にあたる絶壁《ぜっぺき》の、草叢《くさむら》の中からだった。
「応答して見ましょうか」参謀は、尋ねた。
「やって見給え」
「はッ」参謀は、浅川曹長に命令を伝えた。
司令機の尾部から、白い煙がスー、スーッと、断続して、空中を流れた。
それが、判ったものか、ピカピカ光るものは、鳥渡《ちょっと》、動かなくなったが、間もなく今度は、前よりも激しく、閃《ひらめ》きはじめた。
「確かに、こちらを呼んでいる
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