、肉弾が物を言った。
大格闘の末、五人の者は、捉《とら》えられた。しかし肝心《かんじん》の贋司令官の姿は、いつの間にか見えなくなった。
「その壁が、怪しいぞ」
贋司令官は、見ているうちに、そこの壁の中に、吸いこまれてしまったのだ。コツコツと叩いてみると、それは、たしかに空虚であった。
司令部の人達が、誰も知らない脱《ぬ》け孔《あな》を発見するまでには、やや時間が、かかった。追跡して行ったものも、遂に得るところがなかった。
頭部に、白い繃帯《ほうたい》を捲いた本物の別府司令官は、静かに、腰《こし》を下ろした。
「閣下」参謀長が、厳粛《げんしゅく》な表情をして云った。「どうなされましたのですかッ」
「うん、心配をさせたのう。夕方、放送局から帰り、この地下室へ到着してから、洗面所へ、手を洗いに行ったところを、やっつけられた。なっていないナ。別府にも、焼きが、まわったようじゃ」
「相手は、何者でありますか」参謀長は、畳《たた》みこむように、訊《き》いた。
「湯河原中佐に、聞け。G《ゲー》・P《ペー》・U《ウー》の仕業じゃということじゃ」
「なに、G《ゲー》・P《ペー》・U《ウー》!」
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