G《ゲー》・P《ペー》・U《ウー》というのは、労農ロシアの警察隊のことだった。その峻辣《しゅんらつ》[#「峻辣」は底本では「峻竦」]なる直接行動と、驚歎すべき探訪組織《たんぼうそしき》とをもって有名な特務機関だった。日本国内に、G《ゲー》・P《ペー》・U《ウー》が、潜入しているという噂《うわさ》が、前々からあったけれど、まさか警備司令部までにその魔手《ましゅ》が伸びていようとは、何人《なんびと》も想像できないところだった。
 そこへ、伝令兵が、重要なる二通の暗合報告を持ってきて、司令官と参謀長の間へ、置いていった。
「いよいよ、筋書どおりですな」参謀長が、低く呻った。
「うん、早く読あげて、一同に聞かせてやれ」
「はッ」
 参謀長は、すっかり、冷静さをとり戻して幕僚《ばくりょう》を集めた。
「労農ロシア軍は、北満及び朝鮮の国境に於て日本守備隊へ発砲した。吾が守備隊は、直《ただち》に応戦し、敵を撃退中である」
 参謀たちは、めいめい肯《うなず》き合った。
「次に、アラスカ飛行聯隊は、午後十時、北海道、根室湾《ねむろわん》を、占領した。聯隊は、更に、津軽海峡《つがるかいきょう》を征服し、
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