隊でも、同じような不満があるらしいですな」
 とうとう「不満」という言葉を使って、参謀は有馬参謀長に、暗《あん》に警告を発した。
「うん、判ってる」参謀長は、言葉をのんだ。「だが、気をつけて、口をきけよ」
「はッ」参謀は、粛然《しゅくぜん》として、挙手《きょしゅ》の礼をした。(参謀長も、飛行隊の出動命令に、不満を持っていられるんじゃ)と思った。
「司令官の御心配は、近くに起る太平洋方面からの襲撃を顧慮《こりょ》されてのことじゃ」
「そうでもありましょう。しかし、快速をもった敵機に対して、性能ともに劣った九二式や九三式で、太刀打《たちう》ちが出来る道理がありません。帝都の撃滅は、予想以外に深刻であります」
「……」参謀長は、答えなかった。
 伝令が、パタパタと駈けてきた。
「川口町《かわぐちまち》防空隊からの報告でありますッ」
「閣下」有馬参謀長は、司令官の前に直立した。「川口町からの報告が入りました。読みあげさせましょうか」
「いや、よろしい」司令官は、不機嫌に、頭を左右に振った。
「その報告書を、こっちへ、寄越し給え」将軍は、ひったくるようにして、報告の紙片を、手にとった。
「敵国航
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