かり外れ、生き残りの団員は、戦闘の間々に、爆弾の炸裂音《さくれつおん》を聞きたいものだと焦《あせ》ったが、その期待は、空しく消えてしまった。
 彼等の地位は、だんだんと悪くなって、元気は氷のように融《と》けていった。
 折角うまくやったつもりの放送局占領が、筋書どおりの効目がなく、いや反《かえ》って逆の結果となり、東京市民を恐怖のドン底へ追いやる代りに、ラジオと光とは、市民たちの元気を恢復させるに役立ったのだった。同志は、それにやっと気がつくと急に、パタパタと斃《たお》れる者が殖《ふ》えてきた。
 放送局|奪還《だっかん》は、もう間もないことであった。

 某地域の地下街を占めた警備司令部では、別府司令官をはじめ、兵員一同が、血走った眼を、ギラギラさせて、刻々に報告されてくる戦況に、憂色を増していった。
「立川飛行聯隊では、大分|脾肉《ひにく》の嘆《たん》に、たえかねているようでは、ありませんか」
 一人の参謀が、有馬参謀長に、私語《しご》した。
「九六式の戦闘隊のことだろう」参謀長は、さもあろうという顔付をした。「だが、司令官閣下は、出動には大反対じゃ」
「海軍の追浜《おっぱま》飛行
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